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お客様の声

遠く離れて暮らす娘に代わって老親の食生活をサポートします

ある日のこと、ニューヨーク在住の面識のない日本人女性からメールが届きました。メールの内容は、「インターネットで検索して松本さんのことを知りました。両親(ともに代)が住んでいる千葉の実家へ出張料理に行ってもらえませんか」という高齢の両親の体調を気遣う娘様からの依頼でした。

近くに住んでいれば頻繁に訪ねることもできますが、ご主人の転勤で地球の反対側で暮らしている現在、年に2回帰国した折に顔を見せるのがせいぜいだそうで、自分に代わって両親の食生活をサポートして欲しいとのことです。

さらに詳しく伺うと、お母様はもともと料理好きな方で、手料理で客をもてなすのが大好きだったとか(そのことは訪問時に拝見した食器棚の食器類やスパイス類からも窺われました)。また、ご自宅の庭にはハーブが植えてあり、それを使ったお料理も得意だったそうです。

そんなお母様ですが、ここ最近は病気療養中で放射線治療や薬の常用により食欲が落ちており、そのうえ乳製品や動物性たんぱく質などの食事制限もあって日々の料理がストレスになっているそうです。また、歯が治療中のため固いものが噛めず食べる楽しみまで減ってしまったと悩んでいらっしゃるとのことでした。

一方、お父様は昔ながらの「男子厨房に入らず」という考えの方で、お料理は奥様任せでキッチンに立つことはないそうです。

療養中の母を気遣う娘の想いを料理にのせて

ハレルヤでは、共働きで忙しくてお子様にちゃんとした料理を食べさせてあげられないご家庭とか、フリーランスで仕事をされていてご自分ではまったく料理をされない方など、直接ご本人からご依頼いただくケースが多いですが、今回のようにご依頼者に指定されたご家庭を訪問して出張料理をするようなケースもなかにはあります。

娘様のご依頼は、ご両親の食生活を定期的にサポートするという内容でしたので、まずは事前にヒアリングシートでお母様にご希望を伺った後に、「お試しサービス」として実際のお料理をご両親に召し上がっていただきます。そこで体調、好き嫌い、NG食材、調理法、味付けなどさらに細かな要望を伺い、お母様のための料理にカスタマイズしていきます。

「お試しサービス」のお料理のためにご両親のご自宅に伺うと、リビングルームには、娘様ご家族の写真が飾ってありました。

「昔は娘が反抗ばかりしてよく親子喧嘩したものなの。遠く離れて暮らすようになってからは、頻繁に国際電話をかけてきて体調のことを気遣ってくれたり、身体に良さそうなものを次から次へと送ってくれるの」と、嬉しそうに話されるお母様を見ていると、娘様の母を想う気持ちがひしひしと伝わってきました。

娘様からの「健康を気遣い、かつ見た目もよく、細かな好みにも対応できる、安心でおいしいオーガニックな食事をつくってもらえませんか」

というご要望に応えるべく、私も〝一皿入魂〞のお料理をご提供させていただきました。

食べやすく、栄養豊富で食べる楽しさが感じられる料理を

今回の献立のポイントは、「普段は和食を召し上がることが多いがたまには洋風な料理も食べたい」というお母様のリクエストに応えてみました。歯の治療中ということを配慮して、素材を細かく刻んだり、マッシュして(ゆでたり煮たりした野菜をつぶして裏ごしにすること)食べやすくしました。

「豆腐ハンバーグ和風BBQソース」は、5種類の野菜を細かく刻んでよく炒め、ふんわり豆腐で包み込んでハンバーグ仕立てにしました。野菜と豆腐だけですが、ふんわりとした食感とボリューム感を楽しんでいただけます。ハンバーグに添えた自家製BBQソースは玉ネギをベースに甘みを引き出したもので、このソースで召し上がっていただくと一層満足度が高まります。

「つぶし大豆のサラダ」は、〝畑のお肉〞といわれる栄養豊富な大豆を柔らかく煮て、食べやすくマッシュ。刻んだ玉ネギと塩もみしたきゅうりをアクセントに、コレステロールの心配のない大豆マヨネーズでクリーミーなサラダに仕立てました。

「赤玉ネギのマリネとひじきのサラダ」は、ミネラルたっぷりな海藻に、見た目も鮮やかな赤玉ネギのピクルスを加えてさっぱりと仕立てました。クリーミーな大豆サラダとの食感の違いを楽しめます。

「かぶのポタージュスープ」は、素材を丸ごと召し上がっていただけるように、旬のかぶを柔らかく煮てポタージュ状のスープにしました。白味噌を隠し味に使うことで洋風ですがコクがあります。また、かぶ自体でとろみをつけているのでバターなど使わずともリッチな味わいです。

「炒り黒豆入りごはん」は、フライパンで黒豆を空炒りして、なんとも言えない香ばしい幸せな香りがしてきたら五分搗きにした玄米に加えて炊き上げます。もっちりとした触感と炒った黒豆の香ばしさを楽しめます。

料理や食事の様子を撮影してニューヨークの娘様に送信

出来上がった料理を盛り付けていくのは楽しみのひとつです。訪問先のお宅にある食器の中から今日の料理にふさわしいものを選び、特別な時間を過ごしていただけるようテーブルセッティングしていきます。

召し上がっていただく方が、テーブルに着いて今日のお料理を目の前に、どんな反応をされるのか、緊張の瞬間です。

お母様は召し上がりながら一つひとつのお料理について熱心にご質問されて、本当にお料理がお好きな方なのだなと感じました。普段は食事の支度から後片付けまで全て一人でされているお母様ですが、この日は特別です。「いつもとはひと味違った手の込んだきちんとしたお料理が出てくるのに、自分は座って待っているだけだなんて、なんだか落ち着かない」とおっしゃっていました。私たちパーソナルシェフにとって、お料理で笑顔になっているところを目の当たりにしたり、

「おいしかった」「また食べたい」とおっしゃっていただけることが最高のご馳走です。この日もご両親からたいへん喜んでいただけました。

おつくりしたお料理、召し上がっているご両親の様子は携帯電話のカメラで撮影して、ニューヨークにいる娘様にメールで報告しました。喜んでらっしゃるご両親の様子をご覧になられて娘様はほっと安心されたようです。そのあと国際電話で母娘の話は弾まれたようでした。